海外の方への伝え方

外国からの旅行者は、言葉の壁や文化背景が異なることなどにより、プログラム内容をそのまま伝えても理解できないことがあります。諸外国の文化を理解し、英語や他の言語でも防災用語をわかりやすく伝えるほか、それぞれが旅行者からの意見を取り入れて改善していくことで、疑問を解消していくことが可能になります。

1.海外の方へ、「嵩上げ」をどう伝えますか?

「嵩上げ」は、英語で「heightening the ground level in the devastated area」、中国語(繁体語)で「提高加固」と訳しますが、この意味を正確に伝えるには、専門的な知識と聞く方の文化背景の考慮、及び語学力が必要となります。

そこで、防災用語集を用意して、英語例文、中国語(繁体語)例文を使って説明のサポートを行っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

2.仮設住宅はトレーラーハウス?

災害復旧過程の中で、災害のため自宅に住めない人または代替住居が無い方のために建設されるのが応急仮設住宅です。ただし、主にアメリカでは、仮設住宅としてトレーラーハウスが利用されています。アメリカの方に仮設住宅を説明した場合に、恒久的な建築で復興したと感じてしまうかもしれません。どんなに仮設住宅における大変さを伝えても、海外の方の文化に照らしてみた場合に、イメージ及び考え方の相違があってうまく伝わらないケースがあります。

日本と諸外国における災害文化が異なる場合があり、相手に説明しても正確に伝わらない場合があります。

下記に、一般的に知られている日本と諸外国との災害文化の違いを示しています。防災プログラムを実施する際には、以下の災害文化の違いを考慮することで、理解促進につながります。

1 建築技術などの構造基盤 アジア各国では、日本と同様に国で定めた建築基準法が存在するがあまり遵守されていない。また、その他の地域でも煉瓦造や石積み造など耐震性が無い建物が存在する。日本の耐震技術は、全世界に誇れる内容ではあるが、木造建物の建設が困難な諸外国地域も存在するため、地域によって建物の説明は変えることが重要
2 地震警報システムなどの防災システム 各国の地震警報、津波警報などは、日本の高密度観測網と異なり、観測網自体が無い場所もあり、観測網があっても密度が低い。
3 災害報道体制などの社会的基盤 震度(計測震度)は、諸外国には通じない。震度に近いMM震度があるが、専門家のみが使用し、一般的ではない。地域の被害状況を示すのは、建物被害棟数などである。
4 食文化に対応した保存食の考え方 発展途上国などでは、備蓄が無くても災害時でも生活できる基盤がある。そのため、備蓄の話をするには日本の独特の食流通の話が必要となる。
5 避難時のコミュニティ形成などの生活習慣 発展途上国では、日本のようにコミュニティが崩壊していないので、社会背景から説明が必要である。
6 災害に対する避難意識 一般的に防災意識が低く、また「揺れる」ことがどういうことか理解できない場合がある。タイでは、地震よりも洪水に対する避難意識の方が強い
7 防災・減災への取り組み方 ハザードマップの整備や地震の避難訓練の実施などがほとんどの国で行われていない。
8 その他、防災に関する歴史的文化的背景 ヨーロッパなど地震がほとんど無い地域では、地震の意識が低く、洪水や火山などの防災意識が高い。